コロナショック飲食店の現状を考える!事業継続のための提案

店の玄関

 

今現在のようなコロナショックと言われるような感染騒動による混乱状態では、全産業すべての業種が甚大なダメージは避けられない状況は明らかです。

その中でも極めて弱小な個人の飲食店の現状を理解していただきたく、現役の飲食店オーナーの立場から、一般には理解されていない飲食店の実際の経営を、具体的な経営モデルを使ってシミュレーション解説したいと思います。

それによって、飲食店が今置かれている状況を理解していただき、世間で騒がれている、飲食店が危ない、地域の親しまれた有名店と言えども半年後には店が無いかも、と言う噂が誇張ではない現実なんだという事を、理解していただけたらと思います。

そして最後に、いま私が自分の店で実行している対策を説明し、さらに飲食店の事業継続を考えるあなたに、私からの提案、そしてアドバイスがあります。

ぜひ最後まで読んでいただき参考にしてください。

目次

飲食店経営の実態

飲食店が今置かれている状況

従来より飲食業界は、多くの店が薄利多売で商売をしてきているのが現実です。

さらにここ何年か前からは深刻な人手不足におちいり、必然的に人件費が上がり経営を圧迫しています。有名料亭でさえも、後継者不在で閉店に追い込まれているような状態が続いている現状です。

今や飲食業従業員が低賃金で修行を積むなどは昔話で、会社員と変わらない給与水準まで改善されていますが、それでも厳しい労働条件で働く若者の離職率の高さは変わっていません。

さらにスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの、お惣菜や弁当という、いわゆる中食といわれる物の外的な要因で需要が奪われ、競争環境は厳しくなるばかりです。

そういう厳しい競争の中で客単価は横ばいの店がほとんどです。今のようなコロナ感染騒動でない平時でさえ、どの店も固定費の増加に悩みながら、綱渡りで店を維持しているに過ぎないのが普通でした。

そんな状況ですから、飲食業の場合はもう今回のコロナなどは最後のとどめを刺さしに来たようなもので、半年後には店が半分ぐらい潰れるのではと思うぐらいの衝撃です。

いや別に悲観論を書いているわけではなく、目の前に起きている現実に対して率直な感想を言っているだけです。

閉店率が高い理由

それからさらに説明しておきたいのは、産業界の中でも飲食店の閉店率が高いと言われる、もう一つの原因が次に話すことなのです。

この飲食という業界は、実は食品衛生責任者さえいれば調理師免許すら持っていなくても開業することが可能なのです。

ですから調理技術のレベルの差はともかく、誰でも簡単な料理くらいは出来てしまいますから、他の業界と比べて参入障壁がとても低いと言えます。

ですから料理が好きだから、または簡単に儲かりそうだからと言う動機だけで、開業してしまうのです。

素人開業がけっこう多いだけに、すぐに行き詰まるケースが非常に多くて、一般的には3年で半分が閉店、10年持つのが1割などと言う人もいますが、プロの私でさえ実際の経験からすると(4店舗開店オープンさせましたが、今の店以外は事業継続できなくて全部閉店しています。)それはまさに事実であり実感できます。

なぜ経営が難しいのか

なぜそんなに難しいのかと言う事ですが、利益率が少ないという事です。

でもこの位の利益率の低さは他のビジネスでもありますから、理解されないと思いますのでもう一言付け加えて言いますと、「売り上げ額が小さいのに利益率が低いので、利益額そのものが少ないから儲からない」と解説したら理解してもらえるでしょう。

さて以上を念頭においていただいて、ここから実際の経営の数字を解説していきます。

飲食店経営を数字から見る

経営の数字 (月間売上額収支表)

以下、月間売上額収支表ですが、一般の読者でも分かるように数字の前に+-表示を付けておきました。(*収支表は個人事業飲食店のモデルケースの例)

項目

売上対比率 金額(営業時) 金額(休業時)
売上額 100% 3,000,000 0
ーーー ーーー ーーー ーーー
原価 30% -900,000 -0
人件費 25% -750,000 -750,000
地代・家賃 10% -300,000 -300,000
原価償却費 10% -300,000 -300,000
水道光熱費 5% -150,000 -0
その他 10% -300,000 -0
ーーー ーーー ーーー ーーー
利益 10% +300,000 -0

*以上、表の簡単な説明ですが、売上額からいろんな経費マイナスの支出額を引いた残りが、プラスの利益でその利益がオーナーの収入になります。

収支表営業時の金額の説明ですが、縦の列の下段、利益30万円が表の説明どおり事業主の収入になりますが、休業時にはこれが0円になります。

そして減価償却費ですが、これはたとえば冷蔵庫などの償却資産の経費計上額です。

これはとうぜん経費計上額相当分が現金として残るはずの金額ですが、たいがいの事業ではこの償却資産を借金して設備投資しているので、この残った現金はそのまま借金した返済金としてなくなっていきます。

借金ではなくて自己資金で設備投資したのであれば、残った現金は現在の設備が壊れた時の投資資金として積み立てて置かなくてはなりません。

ほとんどの事業主は借入金で設備投資をしますので、このお金は借入金の返済に使われ残らず、次の設備投資もまた借入金でまかなう事になります。事業を続ける限りこの繰り返しで借金はなくなりません。

コロナショック感染騒動による今の状況

そして、今回のようなコロナショック感染騒動で休業状態になった時の収支表が、先ほどの表の右側、縦の列の所になります。(休業時の金額のところです。)

売上額0円に対して仕入れもなくなりますから、原価は0円です。そして水道光熱費・その他の経費も0円になります。

人件費は後でどうするか考えるとして、もしここでやむを得ず従業員全員解雇すれば人件費も0円になりますが、そのほかの出費は無くなりません。

利益のところは先ほども説明したように、オーナーの生活費ですからそれがなくなるという事はその相当額が生活費として必要になってきます。また、減価償却費は借入金の返済に必要ですから、そのままの金額が出費と考えます。

そして、地代・家賃のところが今世間で取り上げられて、話題になっている部分です。店は休業しても家賃は払わなければならない、「どうするんだ~。」となる訳です。

経営者としてドンドン赤字額が膨らんでいる現状で、まずすぐ決断しなければならないのは先ほどの従業員の解雇の問題です。

これが今の状況では、先行きの見通しが全く立たないという状態ですから、判断に迷います。

すぐ営業再開を目指すなら解雇はできません。今は人手不足の時代ですから即戦力を都合よく確保できる時代ではなくなっています。

かと言ってこの状態が長引くようであれば赤字額がドンドン膨らみ、事業そのものが継続困難になります。

これだけ見ても、個人の飲食店はもうだめだなと言う事がわかります。

運転資金の借り入れ

一般的には、払うお金が手元にないんだったら、お金を借りればいいじゃないかと言われます。

しかし、借りたお金は返さなければなりません。そして、何か月分を借り入れするかによってその後の財務体質が大きく変わることになります。

もうしょうがない、と決断して長期戦覚悟で従業員全員解雇(人件費0円にする)の判断をして、借り入れをしたとします。

最短、半年(6カ月)で営業再開と見積もった場合、必要な借入金額は

  1. 地代・家賃30万円
  2. 設備投資(減価償却資産)借入返済金30万円
  3. 生活費30万円

1.+2.+3.=合計90万円x6カ月=540万円になります。

これを5年返済で借りると1カ月の元金返済額は9万円になります。

または、この先1年(12カ月)続いたとしたら540万円x2倍=1080万円となり1カ月の元金返済額は18万円になります。

こういうふうに具体的に数字を入れてみると、個人の飲食店が今後どうなっていくのかと言う事が、明確になってきます。

業界の一般的な見方は、一か月位はほとんどの店がなんとかやり繰りしてしのげたとしても、3ヶ月ほどで潰れる店が出始め、半年後にはかなりの店が無くなるかもしれないという予測です。

それでも生き残った店がそこから営業を再開しても、借入返済金が膨らんでいるので生活をしていけるだけの利益を出していくためには、以前以上の売り上げが必要となり経営の立て直しは簡単な話ではないのです。

以上を勘案すると、今この段階で閉店と言う選択肢も当然出てきます。しかし、その時のネックとなるのがほとんどの事業主が抱えている借金でして、そのまま店を閉めたら破産です。

しかも店を撤退するには更地に戻さなければならないので、さらに負債が増えることになります。

まさに行くのも地獄、撤退も地獄なわけです。

さあどうするか、ここで決断です。私ならと言う考えを提案しますので、参考にしてください。

事業継続のための提案

飲食店が今置かれている状況は最悪、半年後には店が無いかもという現実が迫るなかでも、生き残る店はあります。

その内の1店舗を目指して頑張りましょう。生き残った時には、需要は変わらず供給側がすなわち店の数が減る訳ですから、こちら側に有利になるかもしれません。ま、それは期待でしかありませんが、それほど世の中甘くはないですから。

さあ、ここから現実問題です。これから店をどうしようかと言う事を、真剣に考えましょう。

私の店の場合はこうしました。

銀行融資で資金確保

まず、私は現実にどうしたかということです。

コロナショックと言う状況に異変を感じたその時に、これはまずい、すぐに状況に耐えられるようにまずは資金を確保しなければという事で行動しました。

この場合は緊急を要し出遅れたら融資窓口が込み、手続きに時間がかかってしまうと思ったので、すぐに私の銀行の担当者に電話をかけました。

事情を話し手続きを急いでもらい、そして無事に融資を受けられました。

今現在この借入金と自分の手元資金で、これから半年間はやり繰りしていける見通しはついていますが、その後が見当つきません、不確定要素が多すぎます。

それでもこれから少しずつハッキリしてくるでしょう。じっと耐えて様子見です。

テイクアウトメニュー導入

そして、少し落ち着いたところで急きょ、新しくテイクアウトメニューを導入し、スタートさせました。いきなり始めるわけですから、どのようにそれを告知拡散するかです。

FB、インスタグラム、行政サイトが民間に委託して立ち上げた緊急掲示板、グループで始めたSNSサイト、そして私の店のポータルサイト、個人でやっているSNS、などなど今の時代だからこそ情報を拡散できるツールがたくさんある訳ですから、フル活用、最大限に利用して広報に努力しています。

何とか通常営業の50%位は今現在売り上げています、ありがたいという状況です。

その分だけ延命出来るわけですから、少しずつ売り上げを伸ばすように頑張ろうと思っています。

当面必要のないものは解約

私の店の場合は借りていた第2駐車場を解約しました。

そして、ポータルサイト2社の契約を見直し必要最低ランクで再契約し経費を節約しました。

今後は時期を待つ

今後3カ月もすれば、コロナショックの自粛解除も可能になるかとは思いますが、とにかく通常の営業ができれば、徐々に売り上げが元に戻ることも期待できます。

しかし営業を再開したからといって、すぐには業績が戻るかどうかは分かりませんが、営業再開さえできればまた対策のやりようがあり、いずれは業績が正常に戻るというのが私の描いた筋立てです。

その期間は半年という設定ですが、それ以上かかった場合はまたその時に対策を考えるという事で、日頃から営業しながら考えていればまた状況に応じてアイデアも出ます。

やり繰りしながら時期を待つという事になります。

ここからはあなたへ事業継続のための提案です

しかし、私の店の場合はかなり以前より意識して、事業継続のための強い財務体質の店づくりをしてきたので、有利な条件(自己物件での営業だから地代・家賃がいらない、そして人を雇用しないから人件費がいらないという条件)がそろっています。

ですから私の店の場合と同じ考え方でと言うわけにはいきませんが、それでも経営の基本的な事は同じですから、ここからはどうするかと言う私なりの提案をします。

こういう時は奇策などないですから、当たり前の事をしっかりわきまえて、当たり前に実行していくだけです。

まずは決断

まず、最初に考え決断すべきことは、このまま事業継続か、もうあきらめて閉店するのかという選択です。

事業継続断念、閉店と言う場合は、おのずと後どうするかは必然的にそれぞれ個別に決まってきます。ですから、私のアドバイスはいらないと思います。

私も事業継続断念、閉店した経験が3店舗ありますが、その内の2店舗は居抜きで売却しました。残り1店舗は取り壊し、新築リニューアルオープンした今の店舗です。

居抜きで売却というのは、相当の交渉努力が必要なのは言うまでもないですが、まず普通には無理です。居抜きでは売れません。

そうなると、たいがいは店舗のある場所を原状復帰しなければなりませんから、撤退費用がかかります。ま、そういう事も含めての判断という事になります。

それは、個々の事情により異なりますから、あなたがしっかり考えてください。

事業継続のための提案

さてここからは、これからも飲食店の事業継続をすると決断した場合の、私からの提案になります。

実際は次のような事を調べてからとなるのですが、

  1. 店の経歴または何年営業しているか
  2. 現在までの業績推移はどうか
  3. 店が設定している商圏範囲内の商業環境の将来性はどうか
  4. 店舗および設備の償却年数どのぐらいか

など、店の診断をしてこの先まだいけると判断した場合は、事業継続の提案となります。

しかし、今回はそういう事は無視して、まだまだ有望な店と仮定して次のような提案となります。

  1. 支出額を極力抑える
    人件費も含めてあらゆる支出を総点検して即時削る
  2. 入金を増やす
    自分の店で何か出来る方法を考えてその実行
  3. 生活費を倹約する
    その上で生活費は最小限で考える。浪費は絶対避けなければなりません。
  4. 不足する資金を借り入れる
    そして、その状態で政府系金融機関から借り入れをする。
  5. 当面必要のないものの解約
    あらゆる支出を伴う契約ものを総点検する。

以下、各項目の詳しい解説になります。

1、支出額を極力抑える

そして、ここで忘れてはならない事の一つは、家主との家賃の値下げ交渉です。

これはあなたの交渉努力次第になりますが、「何とか家主さんに協力してもらわないと、このままでは破産してしまう。」と言う感じで真剣に訴える事です。

家主にしても実際、破産されたら債務免除と言う事で、店の原状復帰もしてもらえなくなる訳ですから、大変な損害になります。さらにこんな状況では次の店子がすぐに見つかるかどうかもわかりません。

ですから、交渉次第では有利に働くと思います。

必死の覚悟で交渉に臨むべきです。

2、入金を増やす

少しでも収入を得るための方法としては、やはりテイクアウトメニューやデリバリーサービスでしょう。それ以外の事業は飲食業営業許可証しか持っていない場合は出来ません、別の許可証がいりますから保健所に確認を取ってください。

そうした努力で少しでも収入を得られれば、その分だけ資金が減らず延命できる事になります。

3、生活費を倹約する

このことは言うまでもないことですから、頑張ってください。どんな事でも破産よりはましと言う考え方で取り組むことです。

4、不足する資金を借り入れる

あと注意しなければならないのは、資金の借り入れ先です。私は今回、銀行でしたがこれは銀行の担当者がまだ新人で若く、私の思うように動いてくれる相手だったのと急を要したので銀行にしました。

しかし、あなたの場合は、まず銀行では無くて地元の商工会の相談窓口に行って相談すべきです。直接銀行に行ってはダメです。銀行員は正直言って、信用できません。

その点、地元の商工会でしたら、第三者的な立場で相談に乗ってもらえます。そして政府系の金融公庫など紹介窓口にもなってもらえますが、そういう情報はググればわかります。

銀行員と話をする時は、その人は自分の営業成績を軸にして話を進めるものと思って話をするべきで、けっして鵜呑みにしない事です。

それから、今の時期借り入れ条件は無担保無利子のものがあります。さらに余裕を持たせるためなら、返済猶予期間の付いたものもあります。

どういうものかと言うと借りてすぐに返済が始まるのではなくて、返済時期を遅らせる条件付きのものがありますから、それも選択肢の一つかなと思います。

返済時期を遅らせる条件付きをどういうふうに考えるかと言うと、今すでに返済が伴う借入金がある場合はその完済する時期に合わせて返済時期を設定をするという事です。少しでも無理がない返済計画を立てるのです。

またはその残っている借入金残を、今回の借入金と一本化してならすという手もあります。

どういう事かと言うと、今残っている借入金残高分も含めた金額で今回新たに借り入れをし、そのお金の一部で借入残高を清算して新たに借り入れた借入金の返済に一本化するという事です。

あとは返済金額は返済期間の長短の設定で自由になりますから、選択の自由度が増すという事です。

5、当面必要のないものの解約

契約に伴い支出のあるものはすべてチエック、そして当面不要なものの解約。この場合過剰な保険契約などがあれば見直しです。

まとめ

やはりこの記事の一番大事なところは、事業継続の提案のところですから、その項をまとめとします。

  1. 支出額を極力抑える
    人件費も含めてあらゆる支出を総点検して即時削る
  2. 入金を増やす
    自分の店で何か出来る方法を考えてその実行、例えばテイクアウトメニューの開発など
  3. 生活費を倹約する
    その上で生活費は最小限で考える。浪費は絶対避けなければなりません。
  4. 不足する資金を借り入れる
    そして、その状態で政府系金融機関から借り入れをする。
  5. 当面必要のないものの解約
    あらゆる支出を伴う契約ものを総点検する。

補足

そして、すべて実行したらそれでいいという訳ではなく、毎日コロナショック騒動の状況を見きわめ、軌道修正が必要かどうかを考えながら行動しなければなりません。毎日考えていると、忙しい中でチョットしたアイデアが出る事があります。

ここで大事なことはあきらめないで、常に前向きな気持ちで信念を持って行動するという事です。この信念を持ってと言う事が大事で、そうすると奇跡が起こります。

私がかつて何度も、そのように奇跡を体験してきました。

以上です、飲食店の事業継続を考える場合、私ならこうするという提案でしたがいかがでしょうか。個々人の事情に合わせ参考にしてみてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。お互いにまだまだこれからと言う気持ちで、頑張りましょう。

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