飲食店の経営戦略におけるメニューの考え方!!押さえるべきポイント

ランチメニュー

FBで「新メニュ―始めました」という投稿が多い店を見かけます。

「最近客足が落ちてきたので何とか挽回したい、そのために新メニューを開発してメニューを増やし、お客様を引き付けたい」とお考えの飲食店の店主の方に、私の経験に基づくアドバイスをと思い、記事にしました。

この飲食店における「メニューを増やして売り上げを増やす」という経営戦略についての良し悪しを回答します。その意欲は大いに結構なのですが、その考え方はハッキリ言って間違っています。

それだけの回答では何の解決にもならないので、以下いろいろと解説していきますが、飲食業経営歴40年近くになるオーナーシェフの私が、経験と理論に基づいてお答えします。

目次

私の立場と考え方

現在の飲食業界の状況は、私が創業した頃とは様変わりで、時代の変革とともにどんどん変わってきています。ですから私の店もおおよそ10年ごと位に業態を変え、6年前には思い切って、まったく経験のない異業種に転換しました。

その位にやっていかなければ、同じ場所で40年間も存続するのは無理です。私の近隣の同業者も9割位は潰れて入れ替わっていますし、最近はそのサイクルが短くなってきているように感じます。

そういう状況下において、私の商圏範囲内においても、上場しているような企業から零細な個人店まで、または業種・業態も含めると種々雑多な店が混在しています。

そんな中で一つの理論が、すべてに共通に当てはまるという事はないと思います。

ですから以下、私がこの投稿で記事にする事は、私個人の経験的に得たノウハウであるという事を念頭に、参考にしていただきたいと思います。

私の店は客席数24席のフレンチ洋食店で、個人事業の小規模店です。

私も過去から現在まで、メニュー戦略をいろいろ考え、試してきました。当店に合わせて考えられることは、だいたい試みたと思っています。

40年間を振り返って考えてみても、このメニューを増やすという考え方は、現代においてはなおさらダメで、間違っていると言って良いと思います。商業の環境条件が極端に変わってしまいました。さらに今後も変わっていきますから、経営戦略を身軽にしておくべきです。

飲食店の経営戦略におけるメニューの考え方、その1

飲食店のメニューをどうするかという考え方の、押さえるべきポイントを解説していきます。

メニューを増やした場合のデメリットは、冷静に考えれば誰でもわかることだと思うのですが、過去の私の場合もそうだったように、誰しも目先の期待通りに良くなる事しか頭に無く、そのデメリットは考えていないと思います。

今後、何か新規にやるときにはメリットと同時に、リスクであるデメリットも必ず考えた方が良いです。

ですからここでしっかりと、そのデメリットを理論的に頭に叩き込みましょう。でないと、徐々に経営状態が悪くなっていても、何が原因かわからなくなります。考えにも無いことは気も付きません。

メニューを増やした場合のデメリット

調理作業が多くなり、厨房内の作業効率が悪くなる

厨房内スタッフの人数が変わっていなければ、作業効率が悪くなるだけです。かといってスタッフを増やせば、途端に収益性が悪化します。

そして、それが原因でお客様への提供が全体に時間がかかるようになります。特にランチタイムにはそれが致命的になります。さらに作業効率が悪くなれば仕事が雑になり品質にもバラツキが出るようになります。時には失敗をするようにもなり材料のロスにつながります。

注文のバラツキにより、ホール内の作業効率も悪くなる

ホールスタッフの教育も必要になり、アルバイトスタッフの慣れるまでの負荷が大きくなり、最悪オーダーミスも出るようになる。

さらに、お客様のメニュー選びに時間がかかり、結果オーダーに時間がかかる。そして、配膳の効率も悪くなります。結局、いろいろと時間のロスが増える。

原価率が上がってくる

新しいメニューのオーダーが増えた分だけ、従来のメニューのオーダーが減りますから、個々の材料の回転が悪くなり材料ロスが増えます。という事はそれと同時に、材料の鮮度も落ちます。結果、出来上がった料理のクオリティも落ちます。

在庫管理の仕入れ注文、買い出しに時間がかかるようになります。仕入れ量の読みが狂い在庫食材の賞味期限が切れる場合もあります。

新メニューのための食器の購入が必要になる

これは、必要数だけでは足りなく、破損に備えて予備の分までの含めた費用が掛かります。例えば私の店であれば、一個1000円の食器が必要とすると、

1000円×25席×0,5(満席率50%)×1,2(予備数含む)=15,000円と言う予算計見積額になります。

上記の式はサブ的なメニューの場合であって、メインのメニューの場合は事情が変わってきます。

私の店の場合、貸し切り営業も受け入れていますので、その時はほぼ席が埋まる位の人数になる時があります。その時に提供するメニューとなると食器も満席率100%で計算しなければなりません。

もし、その時の提供する新メニューの種類が5種類あり、それぞれの食器の単価が違うとなると例えば次のような見積もり計算になります。

  • 500円×25席×1(満席率100%))×1,2(予備数含む)=15,000円
  • 800円×25席×1(満席率100%))×1,2(予備数含む)=24,000円
  • 1000円×25席×1(満席率100%))×1,2(予備数含む)=30,000円
  • 1200円×25席×1(満席率100%))×1,2(予備数含む)=36,000円
  • 1500円×25席×1(満席率100%))×1,2(予備数含む)=45,000円

以上、合計見積予算額150,000円になります。

ま、現実的には今現在、店で保有する食器を使えそうなものは転用しますから、こういうことにはならないと思いますが、新規出店の場合は食器代だけでもかなりの費用がいります。いろいろな事情により変わりますが、上記は参考までの例えの計算式です。

新メニューのための材料や食器の保管場所が必要になる

これが結構苦労します。大概の店では厨房内に空きスペースなどありませんし、特に賃貸物件の場合はなおさらです。

新メニューのために増えた材料の保管場所にも困るぐらいで冷蔵・冷凍庫は常に満杯状態です。

メニューを増やして追加オーダーで売り上げを上げる?

メニューを増やして、追加オーダーを期待してもまずでません。なぜならお客様の消費行動というのは、その店に来店するときにある程度予算を決めて来店しますから、それ以上はほとんど消費しません。

メニューを増やして客数を増やす?

これもダメです。サブ的なメニューではだれも興味を持ってくれません。じゃ、メジャーなメニューでは?それもダメです。そのメニューの専門店を探しますから、あなたの店にはそのメニューを目当てには来店しません。専門店には負けます。

ここでひとまず結論

以上、簡単に思いつくままに列挙しても、何の結果も得られないのに、かなり重大な経営上の問題が発生することがわかります。

ですから、ここでひとまず結論が出ます。

経営改善のためのメニュー増加という戦略は、やってはいけないという事です。どうしてもやる場合は、上記の課題を十分に検討するという事です。

チェーン展開しているような企業では、大きなセントラルキッチンを建設して、原材料や資材を各店舗に供給する事によってその課題をクリアしています。

そして従業員教育については幹部クラスは研修施設、パート、アルバイトはしっかりしたマニュアル作成によって、カバーしています。

企業経営と個人経営では、戦略が違います。

企業経営の飲食店は基本「スクラップアンドビルド」、新店舗展開でどんどん利益を確保し、ダメな店はどんどん閉店していきます。飲食業のプロの店でも、失敗が出る時代です。それほど飲食業はむつかしいという事です。

資本力のない個人経営ではとても真似ができないし、同じ土俵では勝てません。

個人店には個人店の強みがありますから、相手の弱点を研究するしかないです。

飲食店の経営戦略におけるメニューの考え方、その2

私がおすすめする、飲食店の経営改善のためのメニュー戦略のための考え方は、メニューを増やすのではなく、その逆で、現在のメニューから徹底的に絞り込んで、メニューを減らすという考え方です。

究極的には、単品メニューに特化した、専門店にしていくという考え方です。

この考え方の利点は何かというと、これは先ほどの「メニューを増やした場合のデメリット」のまったく逆のことが言えます。もう、ことさらに言うまでもないことで、分かると思いますが、一応整理の意味で箇条書きしてみます。

  1. オーダーが単純化して厨房内の作業効率が良くなる
  2. オーダーが単純化してホール内の作業効率も良くなる
  3. 以上の要因によって人件費を減らせます
  4. 無駄がなくなり、原価率が下がってくる
  5. メニューが減った分食器や材料の保管場所のスペースがいらなくなり、家賃コストを減らせる

以上の要素というのは、新規出店の場合は小資本による小規模店で出店可能という事が言えます。

ですから、これから新規出店を考えている人には特に重要な知識です。

重要な知識=経営における重要な要素

「新規出店を考えている人には特に重要な知識です」と前の項で書きましたが、ここは経営の要を指して言っているのであり、重要な事ですから、もう少し詳しく解説します。

飲食店を経営していると、毎日売り上げ(収入)があります。それに伴い、毎日支出を伴ういろいろなコスト(経費)が掛かります。

このコストの内大半を占める三大コストと言われるものが、先ほどの項で箇条書きで記した所にすべて含まれている(太字で表記)のです。改めて下に記しますが、

  1. 人件費を減らせます
  2. 原価率が下がってくる
  3. 家賃コストを減らせる

これら「1、人件費2、原価(材料費)、3、家賃、」を飲食店経営の三大コストと言います。実にこの三大コストだけで、支出(経費)のほぼ7割を占めます。

逆にこの三大コストにかかる支出を、いかに抑えるかで利益が決まります。

これらのコストが、すべて下げられるという事ですから、そこに着目してください。重要ですからねと言う訳です。

まとめ

飲食店の店舗のブランディング化を目指す

私が特にこの記事で強調して言いたいことは、先ほどのメリットを狙ってメニューを減らすのではなく、飲食店の店舗のブランディング化を狙ってメニューを絞り込み、専門特化型の飲食店にするための方法です。

ですからそのようなメリットは、ことさら意識しなくても結果として後から付いてきます。

何でもありの店では特徴がだんだん薄れて、お客様から選ばれる店ではなくなっていきます。

「○○ならあの店」というように経営戦略を練りこんでいかなければ、生き残れません。選ばれる店になるための経営戦略を考えなければならないのです。

色んなお客様に、たくさん来ていただこうという考え方はダメです。百貨店が衰退していく時代なのです。

今あるメニューの中から一番売れているメニューに絞り込んで、そのメニューを徹底的に磨きあげて、このメニューでなら絶対他店には負けないという、こだわりのメニューを開発すべきです。

さらに、盛り付けに個性、提供の仕方に個性、店内に個性、とにかく徹底的にこだわるのです。

私の店は「フレンチ洋食店」ですが、それでもこれらの経営戦略に基づいてかなり進化させてきています。そして、ブランディング化に、かなり効果を上げています。

小規模店の限られた資源で生き残りを模索するなら、まずメニューを絞り込むという経営戦略が大事です。それによりすべての事が集約化し、洗練されてきます。

飲食業界を見ても、それは顕著に表れています。

過去において全盛を誇ったファミリーレストランが衰退して、専門特化した外食チェーン店が多数台頭してきています。グローバルチェーン店はすべてそうです。それだけ業態的には強いという事です。

これは先ほどメリットのところでも説明したように、常識的に当たり前の昔からの結論であって、今さら言うまでもない事なのです。(というのも、昔たくさんの本を読みましたが、その本に書いてありました)

ハンバーグ、ドーナツ、チキン、ピザ、サンドイッチ等々、数えたら切りがないですが、誰もそんな単品メニューだけで、世界的な規模の企業になれるとは思わなかっただろうと思います。

それだけシステム的に強みがあるという事です。それを見習い、考え方を学ぶべきです。

補足

最近でも私の店の近くに新しい飲食店業種が二社進出してきました。

それはカラアゲ専門のチェーン店です。一店舗は路面店、もう一店舗はスーパーマーケットの横に併設店、これらも面白いなと思いました

カラアゲなら子供から大人まで好む人は多いし、食材的にも安いですから、いろんな展開が考えられると思います。(例えば、カラアゲ+○○とすれば、差別化できます)

カラアゲのクオリティ(先の二店舗は試食してみると、従来と違いブライン液に付け込んでいますね)を磨き上げることはもちろんの事ですが、付加価値を付けることによって差別化を図れるという事です。または、テイクアウト商品としても扱いやすいです。

以上、皆様のご健闘を祈ります。

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